「国の教育ローン」と「民間銀行の教育ローン」を徹底比較


教育ローンとは、高校や大学、専門学校などの各種学校の費用として借りる事が出来るローンのことをいいます。

一般的に、借り入れた際の資金使途が自由なフリーローンやカードローンに比べて、教育ローンの金利は利用目的が明確に限られているため、低く設定されている事が多いのが特徴です。

住宅ローン等と違い、「無担保ローン」であるのも特徴の一つです。住宅ローンは、万が一返済できなくなった時のために、土地や建物に抵当権を設定しており、長期間返済が無い場合は、住宅の売却等の措置が取られてしまいます。

マイカーローンでも、クレジット会社や信販会社のものは、車の所有者名義がクレジット会社や信販会社、ディーラーの名義になっていて、万が一返せなくなった場合は、車を返却しなければならない契約になっている事もあります。

一部の金額の大きい不動産担保の教育ローンを除いて、基本的に教育ローンは担保を取らない「無担保融資」となっています。それは民間銀行等の教育ローンでも、国の教育ローンでも同様です。

今回は教育ローンを選ぶ際に、「国の教育ローン」と「民間銀行の教育ローン」との違いや注意点について解説します。

「国の教育ローン」と「民間銀行の教育ローン」の比較表(2018年6月)

国の教育ローン民間銀行の教育ローン
金利1.76%1.5%~4%(金融機関によって異なる)
融資条件・世帯年収の上限あり
・収入の下限無し
・民間銀行の教育ローンに比べて条件が少ない
・年収の上限無し
・年収の下限あり
・勤続年数の条件あり
連帯保証人必要・又は連帯保証人がいない場合は別途保証料が必要基本的に不要
保証料連帯保証人がいない場合必要あり(金利に含まれている場合もある)
借入可能額350万円(1年間の費用のみ)最大2,000万円の金融機関あり
借入方法1年毎にしか借入不可複数年分の契約も可
審査返済負担率による審査なし
独自の指数による審査
(世帯人数、居住年数等)
返済負担率による審査あり
申込方法・日本政策金融公庫窓口
・各金融機関窓口での申込
・インターネットによる申込
・各金融機関窓口
・インターネットによる申込も取り扱う金融機関あり
返済方式・固定金利
・返済期間最長15年
・在学期間中の利息のみの支払いが可能
・固定金利、変動金利
・返済期間は金融機関によって異なる(最長20年)
・在学期間中の利息の身の支払が可能な金融機関あり
・カードローン型教育ローンの取り扱い金融機関あり(在学中に必要な都度借りて使える教育ローン)

国の教育ローンと民間銀行の年収条件を徹底比較

国の教育ローンは世帯年収に上限あり

通常ローンの審査がある場合、年収は高ければ高い方が審査に通りやすいと思っている方が多いと思いますが、民間の教育ローンとの一番大きな違いとして挙げられるのが、国の教育ローンの場合は、年収が高すぎると借りる事が出来ない「上限金額が設定」されている点です。

以下は国の教育ローンの世帯年収の上限となります。

表1.国の教育ローンを利用できる世帯年収の上限

子供の人数世帯年収(所得)の上限
1人790万円(590万円)※1
2人890万円(680万円)※1
3人990万円(770万円)
4人1,090万円(870万円)
5人1,190万円(970万円)

表1の()内の所得金額とは、事業所得者の場合の所得金額となります。

世帯年収と言われても、自分の年収をどうやって調べればいいのか困る人もいるかもしれません。

世帯年収を調べるには、会社員であれば12月~1月頃に源泉徴収票を貰っていると思いますので、その「支払金額」に当たる部分が年収という事になります。

源泉徴収票の支払金額を見て、「自分は500万円だから大丈夫だな」と思った方はもう一点注意が必要です。国の教育ローンを利用できるのは、「世帯年収」が上記の範囲内に収まった金額でなければならないという事です。

もし配偶者も働いていて、収入が300万円あった場合は世帯年収は合計800万円となるからです。その場合、子供が1人しかいない場合は利用する事ができないという事になります。

※1:ただし、子供の人数が1人か2人の場合でも、上限金額が990万円まで緩和される特例措置があります。

  1. 勤続年数が3年未満
  2. 居住年数が1年未満
  3. せたいのいずれかの人が自宅外通学者(又は予定者)
  4. 借入申込人や配偶者が単身赴任している
  5. 今回の教育ローンの資金使途が海外留学資金
  6. 返済負担率が30%超 ※2
  7. 親族の介護費用を負担している
  8. 大規模災害により被災された方

※2:返済負担率については、後述で詳しく解説します。

以上の8項目の中の一つに当てはまれば、子供の人数が1人か2人でも、「世帯年収の上限は990万円」になりますので注意が必要です。

何故「国の教育ローン」には収入による上限が設定されているのか

国の教育ローンを運営している「日本政策金融公庫」は、民間銀行の補完的な意味合いを持って運営されています。

民間銀行で借りる事のできない人向けに、融資条件を緩和することによって、セーフティネットとしての機能を発揮する事を目的としています。

セーフティネットとは、経済的なリスクが発生した時に最悪の事態から保護する仕組みをいいます。教育ローンの場合は、民間の金融機関から教育資金を借りられず、進学を諦めざる得ない状況の事です。

セーフティネットの元々の意味は、サーカスの綱渡りなどで落下した時に、万が一の時のために下に張られた網の事を意味する言葉でした。社会的安全網という役割の事です。

上記のような理由から、国の教育ローンは民間の金融機関の教育ローンよりも「審査が甘い、借りやすい」と広く一般に認識されています。

また国の教育ローンには、年収の上限が設定されているほか、年収の下限が設定されていないのも特徴の一つです。

通常、民間金融機関の場合は、一定程度の収入が無ければ申込できませんが、国の教育ローンの場合は基本的に下限の設定が無い他、以下に当てはまる条件であれば、金利の引き下げが適用されます。

  1. 母子家庭、父子家庭
  2. 世帯年収200万円以下
  3. 生体年収500万円以下で子供3人以上の場合

上記の条件に当てはまると、2018年6月現在「1.76%」の金利が「1.36%」まで引き下げとなります。

ただし、収入が少なければ審査が通りやすいのかと言うと、そうではない事に注意が必要です。

国の教育ローンであっても一定の審査基準がありますので、「必ずしも教育資金が借りられる」ということではありませんので注意が必要です。

民間銀行の教育ローンの場合は、審査基準が厳しい

「国の教育ローン」では、年収が一定額以下だったり、勤続年数が短かったりすると優遇措置を受ける事ができましたが、民間銀行の場合はそういった事はまずありません。

民間銀行の教育ローンに限らず、各種ローンの審査は、「厳格な審査基準」を設けている場合がほとんどです。例えば、申し込みに際して、最低年収を設定している銀行もあります。

例としてよくあるケースで、

  • 前年度の税込み年収が150万円以上
  • 勤続年数が1年以上、自営業の場合は営業年数が3年以上

といった、基準が教育ローンや自動車ローンのチラシの「ご利用いただける方」といったところに記載されています。この条件を満たしていなければ、ローンの申し込みを受け付けてもらう事がそもそもできません。

民間銀行の返済負担率による審査

「国の教育ローン」の場合では、返済負担率が30%を越えると年収による規制の上限が緩和される措置がありました。

しかし、民間銀行の場合は、上限が緩和されるどころか「審査が不承認」になってしまう可能性があります。

返済負担率とは、年収に対して年間の返済金額の割合の事を「返済負担率」と言います。以下の例を元に、返済負担率の計算方法を記載します。

例1

年収500万円
教育ローン:毎月の返済金5万円

年間の返済金5万円×12カ月=60万円

60万円/500万円=0.12

となりますので、この人の場合は、12%が返済負担率ということになります。

借入が1件のみという方は、あまりいないかもしれませんので、もっと複雑な計算例も上げておきます。

例2

年収500万円
自動車ローン:毎月の返済金4万円
教育ローン:毎月の返済金4万円
カードローン:毎月の返済金1万円

年間の返済額は9万円×12カ月=108万円

108万円/500万円=0.216

上記(例2)のケースでは、返済負担率21.6%となります。

実際のケースでは、これらの他に住宅ローンやクレジットカード、携帯電話の割賦払い等全てのローンやクレジットを計算して返済負担率を算出しています。この基準が民間銀行では、一般的には「30%」と言われています。

ただし、銀行ごとに審査基準にバラつきがありますので、30%を超えてしまったからといって諦める必要はありません。

以下は、各金融機関での審査情報を独自の調査した結果特例措置があったケースです。

特例措置

  • 基本的に返済負担率は30%以内、年収500万円以上は35%又は40%以内
  • 住宅ローン利用者は35%以内又は40%以内
  • 独自の指数を元に計算し、勤続年数が長い場合や収入が高い場合は返済負担率による審査を省略

上記のように、基本的には返済負担率は30%となっていますが、年収が高い場合や住宅ローンを利用している場合等は、35%~40%まで上限が引きあがる例もあるようです。

また一部の金融機関になりますが、返済負担率そのものを審査対象としないケースもありました。

金利と保証料、返済年数での比較

表2.金利・保証料の比較

国の教育ローン民間銀行の教育ローン
金利1.76%(固定金利)1.5%~4%前後
(固定金利か変動金利を選ぶ)
一定条件の優遇金利
1章の2項目を参照
1.36%(固定金利)金融機関によって異なる
保証料あり ※3
連帯保証人がいる場合は保証料なし
金融機関によって異なる

国の教育ローンの特徴点

まず国の教育ローンの大きな特徴の一つとして、連帯保証人がいない場合は、(公財)教育資金融資保証基金に保証料を払って、連帯保証人の代わりに保証をしてもらわなければなりません。

連帯保証料とは、債務者が払えなくなった場合に代わりに支払いをする人の事を言いますが、(公財)教育資金融資保証基金は債務者が払えなくなった場合、日本政策金融公庫へ連帯保証人の代わりに肩代わりして払う公益財団法人のことです。

もちろん肩代わりして支払うリスクがあるため、(公財)教育資金融資保証基金へは融資時に、「保証料を一定額」納めなければなりません。

連帯保証人は、別生計の収入がある人にお願いしなければならないので、中々見つからない場合が多いようです。ですので、一般的にも保証基金を利用するケースは多いです。

以下は借入年数毎の保証料の目安となります。

融資金額100万円当たりの保証料の目安 (2018年6月時点)

据置返済なし据置返済2年据置返済4年
返済期間5年18,18221,81825,454
返済期間10年35,98543,18250,379
返済期間15年53,99164,78975,587

据置返済とは在学期間中に利息払いのみとし、卒業後から元金の返済も含めて始める事をいいます。
上記の金がを元に一つの例で計算すると、

(例)借入金額300万円、据置期間4年、返済期間10年

50,379×3=151,137円

という計算が成り立ちます。300万円借入しても、実際に手元に入ってくる金額は、保証料が引かれた金額となるので、285万円程度になる点に注意が必要です。

民間銀行の教育ローンの特徴点

民間銀行の教育ローンは、金利が各銀行によって独自に定められているため、「取り扱いの金融機関」によって違います。

また、保証料の取り扱いについても金利に含まれている場合と、別途保証料が必要なケースが存在します。

特に、保証料は審査によって段階的に設定される場合もあるため、国の教育ローンより金利が安いと思って申込んでみても、結果的に保証料を足すと2.0%以上になるといったケースもありますので、申し込む前に注意が必要です。

ただし、国の教育ローンと違って保証料の前払い(融資金から差し引く)事はあまりなく、民間銀行の場合は金利と一緒に、毎月の返済金に保証料も含まれるケースがほとんどです。

また、金融機関によっては優遇金利が設定されている場合もあるので、ホームページやチラシを良く読んでから申し込みしましょう。

例えば、住宅ローンを利用していたり、給料振込を利用している銀行であれば優遇金利が設定されていたり、銀行の営業都道府県内の進学先であれば金利に優遇が発生するなど、各銀行独自に様々な「優遇措置」を設定していますので、一度確認しておく必要があります。

国の教育ローンの場合は金利は固定金利になっているため、返済期間が5年でも15年でも金利は変わりませんが、民間銀行の場合は注意が必要です。

一般的に、「借入期間が長くなるほど金利は高くなる」ように設定されています。そしてある程度長い期間になると、金融機関は、金利上昇時のリスクを回避するために、変動金利しか選べない場合があるからです。

ほとんどの金融機関では、5年以下~10年以下の固定金利を設定し、それ以上の期間については変動金利での申込しか受け付けていない場合が多いでしょう。

2018年6月現在は、国の政策の下で金利は低く抑えられていますので、長期の変動金利でも1%台で借りられるところもあります。

ただし、変動金利の場合は半年ごとに見直しがありますので、万が一金利が上昇してくるようなことがあれば毎月の返済金額も上昇していく事に注意してください。

借入可能額の注意点

国の教育ローンを借りる際に注意しなければならない点として、1年ごとに必要な分の教育資金しか借りる事ができない点に注意が必要です。

もし4年間分を借りようと考えているのであれば、毎年申込と審査が必要になってきます。

それに対して民間銀行の教育ローンの中には、4年制大学であれば4年分をまとめて最初に審査してくれる商品があります。

カードローン型教育ローン

カードローンと聞くと金利が高いイメージがありますが、そうではありません。教育ローンの必要資金4年分の枠をあらかじめ決めて、その枠内で毎年必要な金額を借入する事ができる教育ローンの制度です。

在学期間中は、残高に対して発生する利息のみの返済となるため、「家計に対する負担も最小限」に食い止める事が出来ます。

この制度の利点としては、最初の年に審査をしておくので、2年目・3年目と申し込みに行く手間が省けるのと同時に、途中で審査が通らなくなってしまう最悪の事態を防ぐことができることです。
teacher
「いくら国の教育ローンであっても、借入金額が膨大になってくると審査が不承認になってしまうケースも存在します。それに対して、事前に4年分の枠の審査が承認されていれば安心感が大きいと思います。」

取り扱っている金融機関には限りがありますので、お近くの銀行のホームページ等で確認してみましょう。

横浜銀行 カードローン型教育ローン

中央労働金庫 カードローン型教育ローン

まとめ

長期一括で固定金利で借りるのであれば、国の教育ローンの金利は魅力的です。また、自分の信用力に不安があり、民間銀行の教育ローンを申し込むのが不安な場合は国の教育ローンに申し込んでみるのも一つの方法です。

国の教育ローンは各金融機関(銀行や信金等)の窓口でも申し込みができますが、インターネットから直接申し込む方法もあります。

ホームページでは、来店不要で20日程度でご入金となっていますが、合格発表時期は申し込みが集中するため時間がかかるようです。必要書類の準備等もありますので、「必要時期の2~3カ月前」にお申込みする事を進めているようです。

民間銀行も同様に申し込みが集中する時期になると審査に時間がかかってしまいます、時間がかかるだけならまだいいのですが、時間がかかる案件だった場合不承認となってしまう可能性もあります。

teacher
「教育ローンはお子様の将来を決める大事な資金ですので、相談からあらかじめ余裕をもって、申し込みを行うようにしましょう。」

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