教育ローンや奨学金の利用を検討している方は、どの教育ローンを利用したらいいか悩んでいるのではないでしょうか。
今回は「国の教育ローン」と「民間金融機関の教育ローン」のどちらがメリットがあるのか検討し、申込する方の収入や勤続年数などに合った教育ローンを提案したいと思います。
まず国の教育ローンと銀行の教育ローン(民間金融機関の教育ローン)は制度がかなり違います。
国の教育ローンと銀行の教育ローンの違いを正確に把握し、申込できない場合もあることに注意してください。
目次
国の教育ローンと民間金融機関の教育ローンの金利・限度額の比較

まずは「国の教育ローン」と「民間金融機関の教育ローン」の金利・限度額等を比較してみましたので下記の表をご覧ください。
- 国の教育ローン(2018年8月現在)
金利 | 限度額 | 据置返済 |
---|---|---|
1.76% | 350万円 | 有り |
- 民間金融機関の教育ローン(2018年8月現在)
金融機関 | 金利 | 限度額 | 据置返済※1 |
---|---|---|---|
中央労働金庫 | 2.40% | 2,000万円 | 有り |
横浜銀行 | 2.1~2.8% | 500万円 | 無し |
千葉銀行 | 2.2%~2.4% | 3,000万円 | 有り |
三井住友銀行 | 3.48% | 300万円 | 無し |
三菱UFJ銀行 | 3.98% | 500万円 | 有り |
姫路信用金庫 | 3.00% | 1,000万円 | 無し |
上記教育ローンは、一括借入型となります。
1.据置返済とは
据置返済とは、在学期間中は利息のみの支払いにする事で家計支出への負担を軽減することができる制度です。
卒業後から元金の返済が始まるため、通常の返済に比べて返済期間が長くなるデメリットと、在学期間中は元金が減らないデメリットがあります。
2.一括借入型とは
一括借入型とはまとめてお借り入れをして、毎月一定金額を返済していく借入方法となります。
据置返済という在学中は利息払いのみを選択できる場合もあります。学費以外で総額いくらかかるかわからない場合や、一年分をまとめて一括で借入して支払いたい場合などに有効な借入方法です。
一方、今はまだ借りなくてもいい金額、例えば後期授業料や2年目、3年目の学費なども借りてしまう事になり、その分使わない金額に対しても、多く利息を払わなければならないデメリットも存在します。
国の教育ローンは保証料に注意しよう
金利だけの面で見ると、国の教育ローンが民間金融機関の教育ローンに比べて低金利なのがわかります。
しかし、民間金融機関の金利の多くは保証料が含まれた金利なのに対して、国の教育ローンは別途保証料が発生します。
保証料は別生計の連帯保証人を立てれば払わなくても済みますが、実際なかなか別生計で安定収入のある保証人を探してくるのは難しいケースが多いでしょう。
表1.保証料の例
借入金 | 返済期間 | 保証料 |
---|---|---|
1,000,000円 | 5年 | 18,182 |
1,000,000円 | 10年 | 35,985 |
1,000,000円 | 15年 | 53,991 |
1,000,000万円の融資で10年返済で借りた場合、実際に口座に振込される金額は、1,000,000円から35,9853円を引いた964,015円になります。
民間金融機関の保証料込の金利と比較して、国の教育ローンとどちらが総支払金額が安く済むのか以下で計算してみましょう。
国の教育ローンと民間金融機関の教育ローンの総支払額の比較

国の教育ローンと民間金融機関の教育ローンの総支払額の比較
表2.国の教育ローンと銀行の教育ローンの比較
借入先 | 借入金額 | 金利 | 返済年数 | 総支払額 | 保証料 |
---|---|---|---|---|---|
国の教育ローン | 2,000,000円 | 1.76% | 10年 | 2,181,100 | 71,970 |
銀行の教育ローン | 2,000,000円 | 2.40% | 10年 | 2,251,516 | 0 |
- 国の教育ローンの総支払金額:2,253,070円
- 銀行の教育ローンの総支払額(2.4%):2,251,516円
200万円を教育ローンで借りて、10年返済だった場合で計算しました。
国の教育ローンの方が、保証料が加算されるため1,554円高くなる結果となりました。
保証料が無料になる連帯保証人とは
国の教育ローンは別途保証料がかかりますが、連帯保証人をお願いする事によって保証料が掛からない制度があります。
連帯保証人とは、借主が返せなくなった際に代わりに返さなければならない立場の人となり、とても重要な責任が発生します。
連帯保証人を依頼するには、制度についてよく説明し、理解を頂いた上でお願いしなければなりません。
国の教育ローンでは、連帯保証人は原則として別居・別生計の方で4親等以内の親族としています。そのため同居の配偶者等は、収入があっても連帯保証人には出来ない事になります。

何%から国の教育ローンの方が有利になるのか

表2の比較表によると、2018年8月現在、民間金融機関の金利が2.4%だと大体総返済金額が同じになるようになっています。
民間金融機関の金利比較表によると、地方銀行や労働金庫は2.4%以下の低水準の金利が設定されているのに対して、大手メガバンクや信用金庫は、3.0%以上の金利が設定されているためあまりおすすめできません。
教育ローンや自動車ローンに限っては、三井住友銀行や三菱UFJ銀行の例を見てわかる通り、大手メガバンクはそれほど力を入れていないため高金利、低融資額の商品ラインナップがほとんどです。

国の教育ローンと民間金融機関の申込基準の違い

表3
収入による申込基準 | 勤続年数による申込基準 | 申込限度額 | 申込金額の年数 | |
---|---|---|---|---|
国の教育ローン | 一定額以下の収入の方 (収入に上限の設定がある) | なし | 1人につき350万円まで | 毎年申込が必要 |
民間金融機関の教育ローン | 安定して継続した収入のある方(例前年度年収150万円以上等) | あり(1年以上、または3年以上など) | 金融機関によって違う 300万円~3,000万円など | 在学中の費用を一括して申込可 |
それとは逆に、民間金融機関の場合は収入が高ければ高い程審査が通りやすくなっています。
そのため収入に上限はありませんが、国の教育ローンとは逆に収入に下限が設けられている場合が多くあります。その金額は大体150万円前後で設定している金融機関が多いでしょう。
以下は国の教育ローンの収入の上限です。
子供の人数 | 世帯年収 |
---|---|
1人 | 790万円 |
2人 | 890万円 |
3人 | 990万円 |
4人 | 1,090万円 |
5人 | 1,190万円 |
国の教育ローンの収入の上限は、子供の人数によって違ってきます。子供の人数が多い程条件が緩和される仕組みとなっています。
ここで注意しなければならないのは、世帯年収です。世帯年収は世帯主の他、配偶者等に収入があればそれも含めた金額となります。
夫:500万円、妻:400万円
の収入があった場合は、世帯年収は900万円となりますので、子供が3人以上いなければ、国の教育ローンを申し込むことができません。
収入は、前年の源泉徴収票で確認できますので、ギリギリの場合は事前によく計算しておくことをおすすめします。
国の教育ローンは、毎年申し込みが必要な点にも注意が必要です。
1年毎の必要資金しか借入できないため、その都度申し込み手続きが必要になります。その点民間金融機関であれば、そういった制約が無い為まとめて借りる事もできます。
国の教育ローンだけでは足りない?奨学金制度も併用しよう


国の教育ローンを取り扱っている日本政策金融公庫の調査によると、初年度の自宅外通学者の平均金額は222.7万円かかるそうです。
もちろん自宅から通学する場合はもっと少なくなりますし、寮や下宿、民間アパート等の種類によっても金額は大きく変わってくるかもしれません。
それでも1年間で約200万円ですから、4年間の大学の場合は単純に計算しても800万円が必要な金額となります。
そういった場合に国の教育ローンと併用して活用するのが、日本学生支援機構の奨学金制度です。
この制度は国の教育ローンが親がローンを組んでいるのに対して、学生本人が奨学金と言うローンを組むことになります。
国の教育ローンと違い、毎月の支給となるため計画的に授業料等に貯めておく必要がありますが、金額が毎月20,000円~120,000円とかなり幅広く設定できます。
国の教育ローンは、民間金融機関で借りる事が難しい人向けに作られている制度でもあります。収入に上限の設定があるのはそのためです。

国の教育ローンの申込は民間金融機関の窓口でもできます。
また、現在はインターネット経由での申し込みも行う事ができるため是非活用してみましょう。
日本政策金融公庫「国の教育ローンインターネットお申込みページ」
上記ホームページでは、インターネットによる申込以外にも、月々の返済金や保証料の試算ができたり、現在の金利や申し込みに必要な書類についても説明があります。
民間金融機関の教育ローンのメリットとは

国の教育ローンに比べて、民間金融機関の教育ローンの圧倒的なメリットは、数多くの金融機関の中から様々な商品を選べることにあります。
同じ教育ローンでも、金利や制度面から金融機関によって違いがあります。
また、国の教育ローンのように収入による上限が無い為、安定して収入がある方であれば審査が通りやすいのもメリットです。大きな金額を借りる際には、配偶者が働いている事もプラス材料となります。
逆に、収入の少ない人や勤続年数の短い人、転職したばかりの人等は審査が厳しくなってしまうデメリットがあります。
民間金融機関の教育ローンは、あくまで一定の審査基準を満たした人にしか貸してくれないのが、特徴の一つとなります。
限度額が大きい
国の教育ローンが限度額350万円なのに対して、民間金融機関の地方銀行や労働金庫、信用金庫等は数千万円までの限度額の教育ローンを提供しています。
奨学金を使わなくても教育ローンだけで十分に授業料や諸経費を賄うことができるため、一回で手続きが済むのが大きなメリットと言えるでしょう。
特に教育ローンで金額が大きいと長期のローンとなる事が多い為、現在住宅ローンや自動車ローン等を組んでいて毎月の返済金が大きい人にとっては、審査が不利になってしまいます。
子供に奨学金(ローン)を組ませなくて良い
奨学金と言っても、将来は返還しなければならないローンと同じです。
2018年7月時点では金利は0.01%~0.22%とかなりの低金利とはなっていますが、学生のうちからローンを組ませることに抵抗を持つ親もいるかもしれません。
そういった際に教育ローンを利用する事で全て親名義で借りる事が出来る為、将来の返済の目途がわからないうちから、子供にローンを組ませることになるよりも、確実に返済できる計画が立てやすいと言えます。
様々な教育ローンの商品の中から選べる
国の教育ローンは一括借入型といって、決まった金額を一括で貸し出すタイプの教育ローンになります。
ただし1年ごとにしか借入する事ができないため、2年目も国の教育ローンを利用する際には、再度申し込みをして借り増ししなければなりません。
また、近年主流になってきているカードローン型教育ローン(当座貸越型教育ローン)といった新しい商品も注目されています。
この商品は最初の審査時に卒業までの借入の限度額を決めて審査します。例えば限度額が1,000万円であれば、在学中はその範囲の中で必要な時期に必要な金額だけ借入する事が出来ます。
また、在学中は借りた分の利息しか発生しないため、一括借入型に比べて在学期間中の利息の支払いを極力少なく抑える事ができます。
あくまで限度額の設定なので、全て使う必要はありません。生活費の節約やアルバイト等で思ったよりも教育ローンで使う金額が少なくなれば、それだけ将来返済する金額も少なくなります。
国の教育ローンの毎年の審査や申込と違い、初年度に一回だけ申込・審査すれば後は利用するだけの商品となりますので手続きの面からも負担が少なくて済むのもメリットの一つです。
現在各地方銀行や労働金庫等多くの金融機関がカードローン型教育ローンの取り扱いを開始していますので、お近くの銀行の取り扱いについて一度確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 限度額で選ぶなら銀行の教育ローン。
- 国の教育ローンの限度額は一人350万円まで、奨学金との併用がないと全てを借入で賄う のは厳しい。
- 国の教育ローンには連帯保証人が必要。保証人がいない場合は別途保証料がかかる。
- 保証料を考えると総支払額は民間金融機関の金利2.4%と同程度の水準。
- 国の教育ローンには世帯収入の上限があるため収入の多い世帯は民間金融機関の教育ロー ンしか選択できない。
- 民間金融機関の教育ローンは様々な種類の中から選ぶことができる。最近は必要な都度借 入できるカードローン型教育ローンが主流。