これから進学の為に教育資金をどこから借りようか考えている人は多いのではないでしょうか。その際に必ずと言っていいほど出てくるのが教育ローンと奨学金です。
教育ローンには民間金融機関の教育ローンの他、国の教育ローンや各自治体でも取り扱っている場合もあります。奨学金として一般的に多く利用されているのが、日本学生支援機構の奨学金です。
日本学生支援機構の奨学金には、給付型奨学金と貸与型奨学金があります。給付型奨学金はその名前の通り給付されるお金なので返す必要が無い奨学金となります。しかし条件が非常に厳しいのが特徴です。
教育ローンは保護者である親が借りるローンであるのに対して、奨学金は学生本人が貸与を受けて、卒業後返還していかなければならないのが大きな違いの一つとなります。
どちらを選んだ方がいいのか、その違いについて今回は比較していきます。
表1.教育ローンと奨学金の比較
借入先 | 借入者 | 利息 | 返済(返還) | 審査 | 借入方法 |
---|---|---|---|---|---|
民間金融機関の教育ローン | 親(保護者) | 有り | 有り | 有り(親) | 一括借入、都度借入 |
国の教育ローン | 親(保護者) | 有り | 有り | 有り(親)※1 | 一括借入 |
日本学生支援機構(給付型) | 学生本人 | 無し | 無し | 有り(親・学生)※1 | 毎月支給 |
日本学生支援機構(貸与型第一種) | 学生本人 | 無し | 有り | 有り(親・学生) | 毎月支給 |
日本学生支援機構(貸与型第二種) | 学生本人 | 有り | 有り | ほぼ無し※1 | 毎月支給 |
※1:国の教育ローンや日本学生支援機構の貸与型奨学金には所得の上限による申込基準があるため、所得が多すぎると申し込みできない場合があります。
上記の表を見ると、返済の必要が無い日本学生支援機構の給付型奨学金が「一番有利な商品」となっているのがわかります。
しかし給付型奨学金を受けるには、非常に厳しい条件がありますので、どういったケースの場合で給付型奨学金を受ける事が出来るのか確認してみましょう。
目次
日本学生支援機構給付型奨学金とは

給付型奨学金とは、日本学生支援機構で取り扱っている大学・短大・専修学校へ進学を予定している人が給付を受ける事が出来る奨学金の一つです。
奨学金を検討している人であれば、誰しも給付型を選択したいと思いますが、給付型奨学金を受けるにあたってはとても厳しい条件があります。
給付型奨学金を利用する際の条件
1.所得上の条件
下記は給付型奨学金を利用する際の条件となっており、どれか1つに当てはまる必要があります。
- ア.住民税非課税世帯(家計支持者の市区町村民税所得割額が0円の人)
- イ.生活保護世帯の人
- ウ.社会的養護を必要とする人
3つの条件を見ればわかる通り、給付型奨学金を受けるには「所得上の制限」があるという事です。(イ)については親が生活保護を受給している事、(ウ)については児童養護施設等に入所しているケースをいいます。
(ア)の住民税非課税世帯とはどのくらいの収入の世帯の事かと言うと下記の表に当てはまる世帯収入の場合です。
表2.(ア)に当てはまる世帯収入の目安
家族構成 | 非課税となる所得 | 非課税となる収入(額面) |
---|---|---|
夫婦子一人 | 126万円 | 205万円 |
夫婦子二人 | 161万円 | 255万円 |
夫婦子三人 | 196万円 | 305万円 |
上記の表を見ると、例えば夫婦と子供二人の世帯の場合は、世帯年収が255万円以下でなければ給付型奨学金の対象とならないという事です。
夫婦の収入を合わせて255万円という事なので、なかなかこの条件に当てはまるには難しいのかもしれません。
2.成績・学力上の条件
親の所得上の条件を満たした上で、かつ学校での成績・学力上の要件を満たす必要もあります。
また、最終的には親の所得証明書や申込書等の必要書類を高校を通して送付する必要があります。高校によって申し込み手続き方法や期限が異なってくる為、注意が必要です。
これらの手続きを踏んだうえで日本学生支援機構の審査の上、受給できるかどうかが決まるという流れになっており、非常にハードルが高い奨学金と言えます。
日本学生支援機構貸与型奨学金(第一種、第二種)とは

貸与型奨学金とは「貸与」となっているとおり、卒業後返還の義務が生じる奨学金の事を言います。
貸与型奨学金の中にも第一種と第二種があり、第一種は利息の発生しない無利子型、第二種は利息の発生するタイプと二種類に分かれています。
第一種奨学金(無利息型)について
無利息型の奨学金と利息があるタイプの奨学金を受けるのであれば、当然無利息型の方を利用したい人がほとんどだと思います。
学力基準について
- (ア)高等学校又は専修学校高等課程の1年から申込時までの成績の平均値が3.5以上
- (イ)高等学校卒業程度認定試験もしくは大学入学資格検定に合格した人、又は科目合格者で機構の定める基準に該当する人
- (ウ)家計支持者(父母等、2人いる場合は2人とも)の住民税(所得割)が非課税であって、以下のいずれかに該当するとして学校長の推薦を得られる人
※特定の分野において特に優れた資質能力を有し、進学先の学校において特に優れた学習成績を修める見込みがあること
※進学先の学校における学修に意欲があり、進学先の学校において特に優れた学習成績を修める見込みがあること
学力基準の条件については(ア)のように明確に平均値が3.5以上という数値が定められています。他の(イ)や(ウ)についてはあまり無いケースなので、通常は(ア)の条件にまず当てはまる成績が必要という事になります。
家計基準について
成績の基準で「3.5以上」が必要であり、かつ家計の所得に一定の制限がある事にも注意が必要です。給与所得者等の場合は以下の表の基準となっています。
表3.第一種奨学金の収入・所得の上限額の目安
世帯人数 | 給与所得者 | 給与所得以外 |
---|---|---|
3人 | 657万円 | 286万円 |
4人 | 747万円 | 349万円 |
5人 | 922万円 | 514万円 |
上記の表のように、収入に上限があります。家計支持者(主に世帯の中で収入を支えている人)の収入が上記の表に当てはまるかどうかが基準となります。
第二種奨学金(有利息型)について
有利息型の第二種奨学金にも第一種奨学金と同じように、学力基準と家計基準の条件がありますが、これらについては第一種奨学金よりも「相当条件が緩和」されています。
大学等へ進学を望む学生であれば、親の収入基準に該当すればほとんどの人が申し込める奨学金となっています。
学力基準について
- (ア)高等学校又は専修学校(高等課程)における学業成績が平均水準以上と認められる者
- (イ)特定の分野において特に優れた資質能力を有すると認められる者
- (ウ)大学における学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる者
- (エ)高等学校卒業程度認定試験(大学入学資格検定)に合格した人、又は科目合格者で機構の定める基準に該当する人
第一種奨学金のように(ア)学業成績が、平均水準以上という条件が厳しいように感じられますが、これに該当していなくても(ウ)の学習意欲があり、卒業できると認められるものに該当すれば良いので、ほとんどの学生が「学力基準についてはクリア」できます。
家計基準について
家計基準については、第一種奨学金よりも「緩和された収入基準」となっています。具体的には下記の表の通りとなります。
表4.第二種奨学金の収入・所得の上限額の目安
世帯人数 | 給与所得者 | 給与所得以外 |
---|---|---|
3人 | 1,009万円 | 601万円 |
4人 | 1,100万円 | 692万円 |
5人 | 1,300万円 | 892万円 |
上記の表のように、第一種奨学金に比べて収入の上限が大幅に上がっているため、第一種奨学金に該当しなかった場合でも、第二種であれば申し込みができる人が多くなります。
奨学金の利率と奨学金を受ける場合のまとめ

給付型奨学金を受けるには、家計が非常に厳しい世帯や、児童養護施設等から進学を望む学生などに向けた奨学金であるため、「一般的な会社員などの世帯には該当しない」ケースがほとんどです。
貸与型奨学金についてはは第一種(無利息型)と第二種(有利息型)の二つが存在し、第一種型奨学金を受ける為には明確な学力基準をクリアしなければ受けられません。
また、第二種奨学金に比べ収入による上限基準も厳しくなっているのが特徴です。
第二種奨学金(有利息型)は進学を望む学生であれば、ほとんどの学生が受ける事ができるのが特徴です。
第二種奨学金の利率はどうやって決められるのか
第二種奨学金の利率には二つの方式から選びます。
1.利率固定方式
貸与が終わった月の利率が適用され、返済まで固定した金利となる。
2.利率見直し方式
約5年ごとに利率の見直しが行われ、市場金利の変動により上下する。
上記のように「利率固定方式」と「利率見直し方式」の二つから選ぶことになりますが、「利率の上限は3.00%」となっています。
2018年7月時点での利率固定方式は0.22%、利率見直し方式は0.01%と現状はかなり低水準の金利で推移しています。
教育ローンと比べた場合の利率
2018年7月現在で、教育ローンの利率は「国の教育ローン」で1.76%となっています。
国の教育ローンは、民間金融機関の教育ローンに比べても「比較的安い金利設定」となっていますが、それと比べても奨学金の利息はかなり低い水準と言えます。
奨学金のまとめと問題点
給付型奨学金や無利息型の奨学金を受ける事が出来るのであれば、それを利用するのが一番総支払額が少なくて済みます。
また、教育ローンと比べても奨学金の利息は低く抑えられているため、有利息型であっても教育ローンよりも総支払額は少なくなるのはほぼ間違いありません。
奨学金の金額も大学進学で第二種奨学金の場合は、毎月20,000円~120,000円の範囲内から選べるため、最大年間1,440,000円までカバーすることができます。
最大まで活用する事により、ほとんどの大学の授業料の支払をカバーする事ができるでしょう。

表1教育ローンと奨学金の比較に書いてある通り、実は借入方法に問題があるため、「全員が奨学金のみでは厳しい」のが現状となっています。
奨学金は毎月給付型となっており、入学が決まってから入学先の学校で手続きをするため「最短でも6月」からしか支給されないのが現在の制度となっています。
入学金や授業料は通常合格が決まってから2週間程度の期日内に振込をしなければならず、必要時期は1月~3月となります。すると、奨学金だけで教育資金を全て賄おうと計算していると初年度費用をどうするかといった問題が発生してしまいます。
初年度の費用(入学金や授業料等)は教育ローンでしか間に合わない

無利息型であっても有利息型であっても、教育ローンに比べて利息が低く抑えられている奨学金ですが、その利用時期や貸与方法に問題があるため、全てに万能という訳ではありません。
大学進学の場合、通常入学後の手続きで奨学金の最終手続きをするため、一回目の交付時期は大体6月になります。そうすると、入学金や授業料を奨学金を使って納めようとしていた場合に問題が発生してしまいます。
教育ローンは民間金融機関の教育ローンも、国の教育ローンであっても入学前の時点で貸し付けを受ける事が出来ます。(正確には合格が決まった時点で)
教育ローンの申込時期と交付される次期は?
奨学金の場合は高校によって申込時期が設定されており、又交付時期に関しては入学先の学校によって手続きをし6月以降に交付されるのが一般的です。

教育ローンの申込みは基本的にいつでもできます。一般的には1月~2月が一番申し込みの多い時期となっています。
民間金融機関で教育ローンを申し込む際に、必要書類となるのが前年の収入がわかる書類、源泉徴収票です。ほとんどの企業で源泉徴収票が1月に発行されるため、それを持って教育ローンの申込に来る人が多いからです。
また、1月になれば大学センター試験があり、ある程度志望校等も固まってきているため、入学金や授業料などの必要資金の目途が立てやすいというのも理由の一つとなっています。
民間金融機関に教育ローンの申込をした場合、「通常2週間程度」で審査結果がわかります。教育ローンの場合はさらに合格通知書を提出する事により手続きが完了し、資金の交付を受ける事が出来ます。
そのため入学金や授業料の速やかな納付とアパートや寮に入る場合はそれらの費用も2月、3月の段階で納める事が出来るのです。
奨学金と教育ローンの併用が一番便利?
自己資金を使わずに大学進学費用を捻出すると考えた場合、教育ローンを利用する事により入学時にかかる多くの費用を必要な時期に支払う事が出来るのと、教育ローンに比べて低利な奨学金を利用する事により、2年目以降の必要資金を確保する事が一番現実的な方法と言えます。
また、仮に学校が自宅から遠く、自宅外通学だった場合(アパートや下宿など)には通常の授業料等の他に生活費や光熱費、家賃代等も必要となってきます。
そういった授業料以外の費用を奨学金を利用して支払う等、ケースによって教育ローンと奨学金を上手く合わせた計画が必要となってきます。
教育ローンと違い、奨学金の申込は高校によって締切の時期がありますので、事前に学校からの情報をよく調べておいて奨学金を利用する場合には忘れないようにしなければなりません。
これらの手続きは学生本人がやらなければならない事が多くあるため、進学を希望しているのであればしっかりと親子で話し合って手続きを進めていく必要があります。
そして、入学先がある程度決まった1月~2月の時期に、教育ローンを申し込んで初年度の費用を支払う準備を親(保護者)がするのが、一番現実的な方法と言えるのではないでしょうか。
