国の教育ローン(教育一般貸付)の利用ガイド。利用条件・審査基準・手続き方法・併用の可否・注意点など徹底解説


国の教育ローンとは、日本政策金融公庫が取り扱っている教育ローンの事で、正式には「教育一般貸付」という名称となります。

日本政策金融公庫では、

  • 「国民生活事業」
  • 「農林水産事業」
  • 「中小企業事業」

の三つの事業を柱に融資等を行っており、国の教育ローンは国民生活事業の一つとなります。

国民生活公庫では国の教育ローンの利用が、年間で約12万件の取扱量となっています。

国の教育ローンは、立場的に民間金融機関の教育ローンのセーフティネット的な役割を果たす、福祉事業に近い教育ローンであるため、民間金融機関の教育ローンよりも借りやすく、審査も通りやすい傾向にあると言えます。

国の教育ローンを利用する際の、利用条件や審査基準、注意点などについて解説していきます。

参考:日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」

国の教育ローンの利用条件とは

国の教育ローンは様々な教育資金として、幅広い収入層への教育ローンとなっています。

教育ローンと言うと入学金や授業料と思われがちですが、それ以外の受験費用や入学後のアパート代や寮費などの居住費用、さらに教科書代や教材費用、パソコンの購入費用といったものまで利用する事が出来ます。

借入する為の収入の基準についても、一般的な金融機関は申込む際の年収の下限がありますが、国の教育ローンにはありません

下限が無いだけではなく、さらに200万円以下の世帯収入の場合には金利の優遇制度もあるなど、収入の低い方でも利用しやすい制度となった教育ローンとなります。

年収による利用条件

国の教育ローンの年収による利用条件は、年収の上限のみであり、年収の下限による制限はありません。

これは民間金融機関より国の教育ローンの方が、より低所得者向けの制度であるため、所得の上限を設定しているためと言えます。

所得の上限規制については、世帯年収と子供の人数によって決められています。子供が多い世帯であれば、収入が高くても借りれる場合があります。

例えば子供が一人の世帯であれば、世帯年収が790万円以上あると国の教育ローンは利用する事ができません。

民間金融機関であれば、収入は高ければ高い程審査が通りやすいのですが、国の教育ローンの場合は収入が高すぎると、そもそも利用する事が出来ない点に注意が必要となります。

表1.子供の人数と世帯年収の上限による利用条件

子供の人数世帯年収
1人790万円
2人890万円
3人990万円
4人1,090万円
5人1,190万円

上記の表が利用限度額となっていますが、子供の人数が2人未満の場合でも、世帯年収を990万円まで緩和できる制度もありますので、もし収入が高くても下記に当てはまる場合は利用できます。

  • 勤続年数や営業年数が3年未満の場合
  • 居住年数が1年未満の場合
  • 世帯のいずれかの方が自宅外通学者、又はその予定
  • 借入申込人、又はその配偶者が単身赴任している場合
  • 今回の融資金額が海外留学資金の場合
  • 借入申込人の年収に占める返済負担率が30%を超えている場合
  • 親族に「要介護認定」等を受けている方がいて、その介護に関する費用を負担している
  • 大規模な災害により被災された方

以上の条件のどれか一つに該当する場合は、子供が二人以内であっても、子供が三人の際の年収条件と同じ990万円まで上限額が緩和されます。

国の教育ローンの借入限度額について

国の教育ローンの借入限度額は、子供一人につき350万円となっています。

また、一度に借りる事の出来る金額は今後一年間に必要な学費等に限られるため、350万円を一括で借りる事が出来るというわけではありません。

今後一年間に必要な学費等を計算し、もし350万円い満たなけば、二年目以降また申し込み手続きをして、次の一年間に必要な学費を借りるといった流れになります。

民間金融機関の教育ローンの場合は、限度額が500万円~2,000万円といった、かなり高額な限度額を設定しているのに比べて、国の教育ローンの限度額は比較的低い限度額と言えます。

国の教育ローンは限度額が350万円ですが、例外として外国の短大や大学などに6カ月以上在籍する場合は、限度額が450万円になります。

ただし、この場合も通常の場合と同じように今後一年間に必要となる費用のみが対象となります。

通常の国内での進学で、限度額が350万円で二年目以降に借入する場合、例えば一年目に150万円借りていた場合は、二年目の限度額は200万円となります。

一年目に借りていた分が毎月の返済で減っていた場合、例えば150万円が2年目には120万円になっていた場合は二年目の借入限度額は230万円となります。

融資の対象となる学校について

国の教育ローンの融資対象となるには、義務教育以上の学校が対象となる点に注意が必要です。中学校や小学校、幼稚園等の教育資金については融資の対象となりません。

基本的には、

  • 大学
  • 大学院
  • 短期大学
  • 専修学校
  • 各種専門学校
  • 予備校等、高等学校
  • 高等専門学校
  • 特別支援学校の高等部
  • 外国の大学

などとなります。

研究生や聴講生等の正規の学籍で在籍しない場合や、防衛大学校や航空保安大学校、海上保安大学校、気象大学校などの公務員として通う学校も対象になりません。

また、企業内訓練施設といった学費のかからない企業内の学校や、特定の企業の従業員が給与の支給を受けながら通う学校も、融資対象とはならない点に注意が必要です。

国の教育ローンの審査基準とは

国の教育ローンは、民間金融機関の教育ローンに比べて審査が通りやすいと言われています。

民間金融機関の教育ローンは収入が高ければ高い程審査に通りやすく、一定の収入が無い場合は申込すらできない場合もあります。

しかし国の教育ローンは福祉事業的な立場の教育ローンであるため、低所得者世帯においても借りやすいよう工夫された制度となっています。

例えば年収が200万円以下であれば、金利が優遇される等の、低所得者世帯に向けた優遇制度を設けている点等が言えます。

国の教育ローンにも審査があるため、審査が通りやすいと言われているからといって誰でも審査に通るとは限りません。一定の基準が曖昧ですが審査に通らないケースも存在します。

ホームページ上では審査基準について、

「ご提出いただいた資料などをもとに、お客さまのご勤務(営業)の状況、ご収入(所得)の状況、お借入の状況、住宅ローンや公共料金のご返済・お支払の状況などから、総合的に判断させていただきます」

となっています。具体的な審査基準は書いてありませんが、勤続年数・収入・他の借入・公共料金などの支払い状況が重要な審査基準であるといえます。

年収による制限はありませんが、収入が低すぎると返済不能と見なされて融資を受けられないケースがあります。生活するだけで一杯の収入であると判断されると、審査が通りにくい傾向にあります。

国の教育ローンの場合、民間金融機関の教育ローンと違って公共料金や家賃の支払い履歴の提出を求められることがあります。

これは公共料金や家賃の延滞があるかどうかのチェックと、生活費が成り立っているのか、また国の教育ローンの返済金を足した上で、生活が成り立つかどうかチェックする場合に使われます。

収入が低くても、持家や家族の持家等で家賃がかからない場合や、生活費が少なくて済む場合や、遅れる事無く公共料金を払っている場合は、収入が少なくても審査に通る事が多いようです。

他の借入が多すぎる場合も審査に通らないケースがあります。民間金融機関の場合、返済負担率が30%が大体の基準と言われています。

返済負担率とは、年収と一年間に支払うローンやクレジット等の返済金額の負担割合の事を言います。

他の借入が多く、住宅ローンや自動車ローン、消費者金融やカードローン等をたくさん使っている場合、審査に通らないケースがあるようです。

ただし、民間金融機関よりも条件は緩和されているため30%の基準よりも返済負担率が大きい場合でも、審査に通る事はあるようです。

その場合の条件として、遅れる事無く返済している事や、家賃や公共料金などについてもしっかりと遅れずに払っている事がプラスの材料として取り扱われることとなるため、国の教育ローンの申込を検討している人は電気やガス、水道・電話などの公共料金の支払いについても、しっかりと管理して遅れないように注意することが重要です。

国の教育ローンの手続き方法

国の教育ローンは、日本政策金融公庫のホームページからインターネットを利用して申し込むことができます。下記は、参考サイトになります。

参考:日本政策金融公庫

また、民間金融機関(銀行や信金など)の窓口でも書類による申し込みを受け付けています。

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ただし、申込に必要な書類等が銀行の支店に常時備わっていない場合もあるようですので、民間金融機関の窓口で申込をする場合は、事前に可能かどうか、電話で確認してから来店する方法をおすすめします。

国の教育ローンは申し込みから約20日程度で入金されるとなっていますが、例年教育ローンの申込が集中する1月から3月頃は審査に時間がかかる事もあるため、早目の申込をするよう呼びかけているようです。

実際には融資の申込から審査の結果がわかるまでが10日前後、その後の手続きで振込先口座に入金するまでが10日前後の日数を必要としています。

必要書類を揃えたり(印鑑証明書や合格通知書など)郵送でのやり取りが必要ですので、やはり早目の手続きをおすすめします。

また、早目に手続きをして融資決定後に入学先の学校が変更になった場合、(例えば第一志望の学校で教育ローンを申込んだが、不合格だったため第二志望の学校に進学先を変更する場合など)もそのまま継続して手続きを進める事が出来る為、早目に手続きをする事によって手続きに不具合が生じるようなことはありません。
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融資が決定していても、もし何かの事情で資金が不要になった場合にはキャンセルをすることもできますので、安心して申込みしてください。

国の教育ローンと他のローンや奨学金との併用について

国の教育ローンは民間金融機関に比べて借入限度額が350万円と低いため、全ての教育資金を賄うのに不足するケースがあります。

例えば4年制の大学の場合、毎年100万円の授業料が必要だった場合は単純計算でそれだけで400万円必要になります。

また、入学金や授業料だけではなく、自宅外からしか学校へ通えない場合はアパート代や寮や下宿費用などが別途必要となってくる為莫大な費用がかかってしまいます。

そのため国の教育ローンは、日本学生支援機構の奨学金との併用も可能となっています。日本学生支援機構の奨学金は教育ローンとは違い、毎月支給型となっています。

入学金や一年目の授業料など、最初に必要な教育資金をまず国の教育ローンで申込することをおすすめします。

日本学生支援機構の奨学金は、入学後の手続きにより支給が開始されるため、例年入学後の6月頃から支給されます。

それでは入学金や初年度の授業料の支払いに間に合わないため、事前に国の教育ローンを申し込んでおくことで、1月~3月頃に必要な入学や授業料を教育ローンを使って支払う事が出来るからです。

国の教育ローンの注意点

国の教育ローンについて注意点が何点かあります。

注意1

まずは申し込みの際の年収の制限についてです。

利用条件についてでも書きましたが、年収の下限はありませんが、年収の上限について利用制限がある点について注意が必要です。

注意2

審査を受ける際に重要な点は、

  • 勤続年数
  • 収入
  • 他の借入
  • 公共料金

などの支払い状況が特にチェックされる点です。

勤続年数や収入の下限に明確な利用条件はありませんが、勤続年数が短すぎたり、収入が低すぎると審査で落ちる可能性が高くなります。

同様に、他の借入が多い場合や公共料金などの支払いに遅れがある場合等も、返済が難しいと判断されて審査に落ちるケースがあるので注意が必要です。

国の教育ローンを申し込む際には、事前に数か月前から公共料金などの支払が遅れないように管理する事が重要と言えます。

注意3

借入限度額が、他の教育ローンに比べて低い事に注意が必要です。

国の教育ローンの場合は、350万円と限られた限度額になっているため、在学期間が長い4年制大学等の場合には途中で借入限度額が足りなくなってしまう可能性があります。

そういった場合に備えて、日本学生支援機構などの奨学金を有効活用した計画を立てる事が重要です。

奨学金は教育ローンと違って毎月支給になるため、計画的に貯めて授業料の支払いなどに利用する必要があります。

注意4

毎月の返済金を事前に計算し、将来の無理のない支払計画を立てることも重要です。

日本政策金融公庫のホームページには毎月の返済額を計算できる返済シミュレーションがあります。

参考:日本政策金融公庫「返済シミュレーション」

この返済シミュレーションを有効活用し、いくら借りたら毎月の支払いがどのくらいになるのかを計算し、将来無理なく返済できるように事前に計算しておきましょう。

注意5

連帯保証人にも審査がある事に注意が必要です。

国の教育ローンを利用する際に、連帯保証人が必要になります。連帯保証人がいない場合でも保証料を支払えば申し込むことができますが、返済期間が長くなると保証料の金額も大きくなってきます。

連帯保証人をつけることによって保証料を払わなくていいメリットが生まれますが、原則連帯保証人は別居・別生計の方で収入のある人でなければなりません。

連帯保証人とは、もし借入した債務者が支払えなくなった場合に代わりにローンの支払いをしてくれる人の事で、なかなか身内であってもお願いしづらいものです。

なおかつ、進学者・在学者の方の4親等以内の親族でなければならないなど、条件もあり源泉徴収票の提出などが必要になります。

別居・別生計なので申込人の配偶者の方は連帯保証人にする事はできません。

連帯保証人がいない場合は、別途保証料が発生しますので、その点に注意が必要です。

保証料がいくらかかるかは、下記の表に一例を載せましたが、国の教育ローンの返済シミュレーションで計算できるため実際に借入する金額や借入期間を入力しどのくらいかかるか事前に計算しておくことをおすすめします。

表2.保証料の例

借入金返済期間保証料
1,000,000円5年18,182
1,000,000円10年35,985
1,000,000円15年53,991

注意6

国の教育ローンと奨学金制度の違いについて注意が必要です。

国の教育ローンは、あくまで学生の保護者である親が借入して支払う制度となっています。それに対して奨学金は学生本人が貸与を受け、学生本人が返済していくという制度になっています。

誰が借りるのかが違ってくる点が特徴になりますので、ご家庭でよく話し合ってどちらをどのくらい利用するか決める事をおすすめします。

日本学生支援機構の奨学金を利用する場合は、在学中の学校(高校)での手続きが必要となりますので、事前に申し込みのスケジュールを確認しておくことも重要です。

国の教育ローンは保護者の方がいつでも申し込むことができますが、奨学金の場合は決まったスケジュールでの手続きが必要になるため、利用を考えている学生は学校からの情報をよく聞いておく事が重要です。

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