教育ローンと一口に言っても、たくさんの教育ローンがあります。
銀行等の民間金融機関が取り扱う教育ローンと違って、日本政策金融公庫で取り扱う教育一般貸付の事を「国の教育ローン」と言います。

国の教育ローンにも審査があり、審査内容によっては落ちてしまうケースもあります。
今回は国の教育ローンの審査を通るために、審査に落ちる要因やその対策方法について説明していきます。
目次
収入が高すぎると借りられない、年収制限に注意

国の教育ローンの特徴点の一つとして、年収による申し込みの制限があります。
一般的に、民間金融機関で教育ローンや住宅ローン、自動車ローン等を組む際は、年収が高ければ高い程審査に通りやすい傾向にあります。
そのため、「一定以上の年収の人は民間の金融機関から借りてください」という意味も含めて、年収制限が設定されているのです。
表1.国の教育ローンの年収による制限
子供の人数 | 世帯年収 |
---|---|
1人 | 790万円 |
2人 | 890万円 |
3人 | 990万円 |
4人 | 1,090万円 |
5人 | 1,190万円 |
上記の表にあるように、子供の人数によって借入できる世帯年収の上限が設定されています。
例えば、子供が二人の家庭では世帯年収が890万円以上あると、国の教育ローンは利用する事ができません。子供の人数が多ければ多い程、条件は緩和されるようになっています。

というと、そうではありません。国の教育ローンでは、ある一定条件に当てはまれば、上記の表よりも、年収条件を緩和させる制度を設けています。下記に当てはまれば年収制限が緩和されます。
子供が二人以内の場合で、下記条件に当てはまると世帯年収の上限額が緩和されます。
- 勤続年数や営業年数が3年未満の方
- 居住年数が1年未満の方
- 世帯内のいずれかの子供が自宅外通学者(アパートや寮などに住んでいる)
- 借入申込人や配偶者が単身赴任の場合
- 今回の融資が海外留学資金の場合
- 借入申込人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率が30%超
- 親族などに「要介護(要支援)認定」を受けている方がおり、その介護に関する費用を負 担している
- 大規模な災害により被災された方
以上の条件の内、一つでも当てはまる場合は、子供が一人の場合は790万円、子供が二人の場合は890万円だった世帯年収の上限が、990万円まで引き上げられる優遇措置があります。
- 自宅外通学や単身赴任の場合は、それが証明できる住民票や賃貸契約書
- 親族を介護している場合は、要介護(要支援)の認定を受けていることが確認できる書類
- 被災している場合は、罹災証明書
など、それぞれのケースによって証明できる書類等が必要になりますので注意が必要となります。
利用条件に当てはまっていても審査に落ちるケース

収入が基準以内であっても、国の教育ローンには独自の審査があります。
そのため民間金融機関の教育ローンの審査程厳しくはないのですが、ある一定条件まで満たせていない場合は、審査に落ちてしまうケースがあります。
審査基準は、
- 他の借入状況や収入の範囲の中から、返済の見込みがあるか
- 他の借入や公共料金の支払い状況から、遅れずに返済できる見込みがあるか
- その他勤続年数や営業年数等が、著しく短期間だったりしないか
といった様々な面から審査されます。
どれも民間金融機関で、教育ローンや自動車ローン等を借りる時の基準とほぼ同じですが、国の教育ローンは民間金融機関で借りるよりも、基準が低めに設定されているため借りやすいと言われています。
他行・他社の借入状況から返済不能と判断されるケース
国の教育ローンの審査においても、自己申告と個人信用情報の照会による審査が行われます。
ここでは、他の金融機関やクレジット会社などの借入状況を調べられ、他の借入金額が多い場合には審査に通りません。
他の借入やこれから借入をする金額を合わせて、収入に占める割合の事を「返済負担率」と呼びます。民間の金融機関においては、返済負担率が30%前後を超えると審査に通らないと言われています。
返済負担率の簡単な計算の仕方は、借入金額の年間の返済額を収入で割って算出します。
表2.返済負担率の計算について
ローンの種類 | 借入金額 | 年間返済額 |
---|---|---|
自動車ローン | 1,000,000円 | 360,000円 |
国の教育ローン | 2,000,000円 | 240,000円 |
上記の表で、自動車ローン100万円を持っている人が、新たに教育ローンを200万円借入しようとした場合の返済負担率の計算方法について説明します。
年収200万円の場合の返済負担率の計算
- 年間返済額÷年収=返済負担率
(360,000+240,000)÷2,000,000=0.25(返済負担率25%)
既存のローンと、これから借りる予定のローンの年間返済額を足して、年収で割る事によって返済負担率を算出する事ができます。
上記のケースでは、25%ですので民間金融機関での教育ローンの借入も可能であると判断できます。
民間金融機関の返済負担率の基準は30%前後ですが、国の教育ローンの場合は、それを超えていても審査に通るケースが存在します。
いずれにしても、借入する際の利用条件の中に収入による制限がありますが、その緩和措置の中の一つに、「借入申込人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率が30%超の場合」というものがある通り、返済負担率が30%を超えていても国の教育ローンであれば審査が通る可能性があるという事です。
収入から返済が不可能と判断されるケース
国の教育ローンの審査は、民間金融機関の教育ローンとは異なり、生活費についても審査対象となってきます。
一般的に民間金融機関の場合は、生活費で借入返済が不可能と判断されることはありません。それは借り入れ条件の一つとして最低年収を設定しているためです。
これは申し込みの前段階で、最低年収を設定しておくことによって「生活費として最低150万円は必要であるため、それ以下の収入の場合は申込できません」と表明していると考えてください。
しかし国の教育ローンにおいては、申込における最低年収の設定がありません。そのため家計の状況を審査し、生活費として赤字になっていなければ、借りる事ができる教育ローンとなっています。

それは、
- 年収に対して家賃や公共料金が多すぎないか
- それに返済金額を足しても返済する事ができるか
どうかを計算して判断します。
例.年収から返済が不可能と判断されるケース
- 収入:120万円
- 家賃(年間):40万円
- 公共料金:30万円
- 国の教育ローン:借入金額200万円 返済額30万円
上記のようなケースで申込んだ場合、収入から家賃や公共料金、ローンの返済金を引くと残り20万円しかなくなってしまう事になります。
ローンが無ければ、食費等は何とかなるのかもしれませんが、国の教育ローンの返済が始まると生活が難しいと判断されて審査に落ちてしまうケースになってしまうでしょう。
他の借入や公共料金を延滞してしまっている場合
年収もそれなりにあって、返済可能と思われるケースでも審査に落ちてしまう場合もあります。
これは収入と支出のバランスが悪く、毎月の返済や支払いが遅れてしまっていて、国の教育ローンを借りたとしても正常な返済が見込めないと判断されて審査に落とされてしまうケースです。
過去6カ月の返済状況や支払い状況をチェックされ、正当な理由が無く毎月遅れてしまっていたり、長期にわたって支払っていないものがあったりした場合は、審査に通らない可能性が高まります。
ただし、軽度な遅れが1、2件程度あるだけであれば、その理由によっては審査に通る可能性があるため、それだけではあまり気にする必要が無いとも言えます。

特にこれから国の教育ローンを申込しようとしている方は、公共料金の支払口座の通帳を見せる必要もあるため、支払日をしっかりと確認し、残高不足による遅れが無いように計画的に口座を管理する事が重要です。
もし万が一引き落としを忘れてしまった場合は、その後に振込などで支払いをした領収書も一緒に保管しておきましょう。
支払いをした記録を残しておくことで、未払いのまま放置していない証拠にもなります。
勤続年数が短い場合にも注意が必要
民間金融機関の教育ローンの申込の場合は、明確に勤続年数による制限などがあります。
ほとんどは勤続1年以上、もしくは営業年数3年以上なければ申し込むことができない場合がほとんどです。これは教育ローンに限らず、自動車ローンや住宅ローンなどにも存在します。
ただし、申し込むことはできてもそれで審査が通るかどうか、というと話は別になってしまいます。
ローンの審査においては、継続して長期的に安定した返済ができるかどうかというのが、重要な審査のポイントとなります。
これまで上記に上げたように他の借入も少なく、生活費もなんとかなるケースであっても、勤続年数が短すぎるとマイナスポイントと判定されてそれが原因で審査に落ちる可能性が高まります。
できることなら、国の教育ローンを申込んで審査が通って資金を受け取るまでは、仕事を続けて勤続年数を長くしておくことが、審査を通りやすくするためのポイントと言えます。
信用情報にブラック情報があると審査が通らない
過去に自己破産や債務整理の経験をした場合や、長期にわたって借入を延滞してい場合は、信用情報にブラック情報がある事が考えられます。
クレジットカードや携帯電話の割賦払いによる購入の審査も難しくなるため、本人はブラック情報になっているかどうかはある程度わかると思いますが、もし不安な方は自分で個人信用情報機関へ照会し、調べる事も出来ます。
上記の2つの信用情報機関で調べる事ができますが、どちらもほとんど同じ情報を持っています。
あえて違いがあるとすれば、加盟している貸金業者(街金など)に違いがある程度で、消費者金融や銀行、クレジット会社等はほとんど両方に加盟しています。
あまり有名じゃないクレジット会社や貸金業者から借りている場合は、JICCで登録されている場合が多いようなので、JICCで照会するか2カ所から照会する事をおすすめします。
今からでもできる審査落ちへの対策

今からでも遅くはありません。国の教育ローンの申込を検討している方は、今からでもできる審査への対策をしっかりとしておきましょう。
これから有効な審査対策をすることによって、数カ月先に申し込む国の教育ローンを有利に審査を進める事ができるかもしれません。
返済金や公共料金の支払いを送れないようにする
返済金は遅れてしまうと、個人信用情報機関へ登録されて、通帳などが無くても遅れたことがわかってしまいます。
また、公共料金や家賃の支払いは、通帳の写しを提出した際にチェックされる項目となります。
また、万が一遅れてしまった場合はその後の支払いの経過を領収書等で保管しておくようにしましょう。
他行・他社の借入をまとめて年間の返済額を少なくする
審査の際に、返済負担率による審査がある事を説明しましたが、返済負担率が高すぎると審査に落ちてしまう可能性が高まります。
返済負担率は借入金額の総額ではなく、年間の返済額で審査される点に注意が必要です。
年間の返済額は、返済期間が短ければ短い程大きくなります。
早く返済を終わらせたいからと言って、自動車ローンや住宅ローンを短期間の借入で申し込むと、その分月々の返済金額が大きくなり返済負担率を圧迫してしまいます。
どうしてもという時は、繰上げ返済できるケースがほとんどですので、繰上げ返済を上手に利用して年間の返済額を上げないような借入を計画しましょう。
すでにクレジットカードや消費者金融でキャッシングしている場合や、数社のカードを利用している場合は審査に不利になります。
もう複数のカードを利用してしまっている人は、ローンの一本化を利用して一つの返済にまとめることにより、年間返済額を少なくする事ができるかもしれません。
実際に、複数のカードを利用していたり、複数の消費者金融を利用している場合は、審査担当者から多重債務者と判断されて審査に落ちる可能性もあります。
そうならないためにも、できれば銀行系のローン等で一本化できれば、今後の手続きも有利に進められる事になるでしょう。
申し込み前の転職はなるべく控える
国の教育ローンの審査において、勤続年数もある程度考慮される審査基準となります。
上記の他の借入状況や返済負担率程重要な項目ではありませんが、審査のラインギリギリになった場合に、大きなプラス材料となるのが勤続年数です。
逆に勤続年数が短いと、例え直近の給料が高くとも継続して収入が得られるか不透明と判断されて、マイナス材料になってしまいます。
たとえ転職先が今の会社より給料が高くても、勤続年数が短くなることによって審査にマイナスに影響してしまうと考えてください。
どうしても、国の教育ローンの申込前に転職しなければならないかどうかを、よく検討してから転職することをおすすめします。
信用情報にブラック情報等の不安がある場合
自分の信用情報に不安がある場合、自分で個人信用情報機関から開示をして確認するのも一つの方法です。
しかし、自分で調べるのにどうしても不安がある場合は、国の教育ローンの申込を事前にしてしまう事をおすすめします。
第二希望や第三希望の学校に進学先が変更になった場合は、変更先の学校で最終的に契約する事になるため、事前の段階ではあくまで希望の学校に入学する場合の必要金額で申し込むことができます。

早めに事前申し込みをすることによって、もし審査が通らなかった場合の対応方法も早期に手を打つことができます。
例えば、配偶者や他の親族にお願いして、違う人の名義で申し込んでもらう方法や、奨学金の利用を検討してみるなどといった方法が考えられます。
国の教育ローンに限らず、教育ローンの申込や審査は早め早めに手を打っていかないと、教育資金は1月から3月の間の限られた締切の間に振込をしなければ、入学できなくなってしまいます。
最悪のケースとならないように、事前申し込みを活用して子供の進学に備える事が重要です。
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